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商品について
人魔境界地域は、大陸の中間を西端から東端まで横切る地域だ。
幅は数千km、縦は500km以上、大陸全体からみるとくびれた部分になっている。国が数個は入る地域。ここは人類を絶滅させようと戦争を起こし、人類連合軍に完全絶滅させられた種族達の領土である。
人類国際連合軍は、絶滅戦争終結当時は兵力数千万という超大軍だった。この数を支える基地、兵站、輸送路があり、円滑に運用する能力がある。まるで一個の独立国の様なものだった。
王族協議会は戦災復興の為にこの組織を使って、人魔境界地域を大規模に開発しようとしていた。
そうした時期に、上魔のコミュニティへの参加を促す上魔側と王族協議会との接触があった。
一方で人魔境界地域では、巨大な翼龍の大群が連合軍の前に現れていた。
人類と敵対する上魔に龍族はいなかった。龍族は連合軍の将兵多数に対し交感(テレパシー)をしてきた。
この地域は自分達が占領した。勝手な利益行動は禁ずる。禁を〇〇た場合、殺戮を以て応える。
竜達は立ちはだかっているだけで、何もしてこない。連合軍も、命令が下されないので何もしていない。
総司令部は事態を王族協議会に報告したが、そのまま静観するよう命じられた。
新たに敵を作りたくなかったのだ。
上魔の要求は、大陸に秩序をもたらしてほしい、というものだった。
前線の連合軍には、殺戮を前提とする龍の大群が立ちはだかっていた。
上魔の言葉を信じるのか?人類は新たな敵と戦うのか?どちらでもない選択肢はあるのか?
前線の将兵から見た龍達は、強そうだが勝てなくもない敵に見えた。
龍の大群とはいえ、一千万なんて数はいない。せいぜい数万匹。上魔を絶滅に追いやった実績もあり、自分達の術式に自信を持っていた。
奥義術式で当たれば、殺せると思いますぜ。
連合軍は戦争の為の組織。敵がいなくなれば仕事がない。敵が必要だ…。
龍達と連合軍の対峙は、人間界の金融市場にも大きな影響を及ぼしていた。
巨大な連合軍が消費している食料を筆頭とする膨大な資源、その全てに原価があり値段が付いている。
未来の値段を決める先物市場にとって、戦争が終わるのか続くのかは、極めて大きな問題だ。特に、滅ぼした上魔種族の土地の値段などは異様な値上がりを見せており、戦争が続くとなれば一気に値崩れする。
一方で食料や医薬品などの消費品を扱う側にとっては、戦争継続こそが値段の安定になる。世の為人の為だ。
大商人達は戦争による人間界の拡大を前提に動いているので、終戦は望んでいない。
だが王族協議会の厭戦ムードは深刻であり、龍達にしても戦争をやる気があるか分からない。事によっては終戦に向かうかもしれない。
前線の将兵から見た龍達は、強そうだが勝てなくもない敵に見えるそうだ。
奥義術式で当たれば、事を起こせるかもしれない…。
睨み合いが続いて一ヶ月。だが先に動いたのは龍達だった。前線の連合軍の頭上を軽々と超音速で飛び越え、後方の商人達の大規模な輸送隊を襲った。
戦争終結による土地開発と建設需要を見越した木材商が、抜け駆けで大量の樹を伐採して在庫の確保に走ったのだ。
後方の防衛部隊が応戦したが、全く刃が立たない。輸送隊は全滅。応援要請で急行した増援も短時間で全滅し、龍達は悠々と元の場所に戻った。
連合軍司令部は王族協議会に龍の討伐を申請した。王族協議会は申請を受け、討伐を命じた。
連合軍の総攻撃が始まったが、龍は極めて強かった。奥義術式が効かない。相手の術式展開に割り込んで妨害する、妨害されない様に防御する、こうした攻防を術式戦という。その術式戦でまるで歯が立たない。術式戦で負けるということは、物理攻撃が一切通用しないということだ。それが魔奥導波動剣でも、核分裂反応による核爆発であろうとも。
人類連合軍は、総数で千分の一以下しかいない龍達の術式と豪火に押され、後退を始めた。後退の手際が悪い軍団が壊滅し、その事で前線に穴が空き、龍達が雪崩込んでいく。空を飛べる高位術師から消耗し、地上は龍が吐く豪火に包まれ、低位術師や雑兵がまとめて大量に焼き尽くされる。
龍達は睡眠時間すら与えなかった。連日戦闘が続き、後方基地すら安全のために土地を引き払って人間界側に移動した。これは、前線それ自体の後退を意味した。
連合軍は人間界の欲望の為、自分達が生き残るため、あらゆる手を尽くして戦ったが、戦況は傾かない。
開戦から一週間後、龍達は交感をしてきた。降伏勧告だった。人魔境界地域の全域を放棄しろ。人間界まで後退すると約束するなら、これ以上の殺戮はしない。
連合軍総司令は、上魔コミュニティと王族協議会の話し合いを知っていた。秩序を望む彼等と、龍達の行動は矛盾する。
同じ質問を、王族協議会も発した。
お前達は、この地域をどうするつもりなのか。全域が龍族のものになるなら、我々は人間界の安寧の為に、後退せず徹底抗戦せねばならない。
彼等と龍は答えた。人間界に侵略する意図はない。故にこそ、境界線を作る為にこの地域を占領した。
今の状況は、人間界にとって極めて大きな危機だろう。かかる状況で、戦争をやめられるかどうか。お前達を見ている。
交感とは、相手の心が観える。自らの心も観られている。彼等に侵略の意図がないのは分かった。
振り返れば、戦争の目標は既に達成している。結局欲をかいて人間界を拡大しようとした事が、龍達の行動を招いた。
我々は試されているのではないか?不信を掲げて欲望の為に戦争をするのか、負けを認めて戦争を終わらせられるのか。
目標を果たしたのだから、戦争をやめるべきなのだ。
王族協議会の結論により戦争は終わった。
連合軍は人魔境界地域の全域を明け渡し、人間界まで後退した後、解散された。その後、GLOBE GUSTが結成された。
人類連合軍は矛だった。GLOBE GUSTは盾である。耐えるのではなく獰猛な盾だ。機動兵器という発想と、そこに高位術士を乗せるという発想は、龍族に負けた事から来ている。高位術者は元より空を飛べるし超高速で走れるが、念力のリソースは有限。移動は機械に任せ、念力を戦闘・防御に使いたい。
その龍族は、定期的にGLOBE GUSTに領空侵〇〇てくる。機動兵器と戦闘をして、宿題とアドバイスを出して帰っていく。
GLOBE GUST結成当初の機動兵器は、低性能なプロペラ機だった。龍は付き添うようにゆっくり飛んで、叩き落とし、頼んでもいない様々なアドバイスを繰り返した。
龍族は初めから人間族と敵対する意思はなく、人間界が上魔コミュニティに参入してからは人間界の科学技術の向上に関心を寄せているのだ。
原層科学の発展は人間界を守るのにも社会の発展にもつながる。人間界の武力拡大にも繋がるが、龍族にとってはそれこそ望む所だった。
人間は知恵を得て退化するのか、高みへ登るのか、それを知るには知恵を与えなければいけない。と交感で答えたが。
龍族が何を思って人間と関わっているのか、現代の人間には全く伺い知れない。
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