緑に戻りつつあった廃道を抜けると、気づけば纏わりつく嫌な湿気はすっかりと消え去っていた。 　亡者の声に似た風が恨めしそうに吹き抜ける事もなく、肌を撫でた風は心地の良いものになっている。 　太...

秩序の外側は敵対する者で溢れ返っている。 　唯一神の絶対的な力の外側――――所謂街道や廃村、遺跡。 　奴らは秩序の下で生きる者達へ理不尽な憎悪を持ち、なんの意味も持たない死を循環の外で引き起...

全ての者へ平等に平穏をもたらす日の光も届かず、湿った空気に包まれた深緑の森。 　そこは秩序の外。 　外なる神々の加護を受け、崇拝する者達の巣窟。 　本来居てはならない生物の巣窟。 　森を...

残された者達の荒地 　第零章『プロローグ・旧世界の書き残し』 　この書き残しを誰かが読む時があれば、きっと世界は戦争によって滅んでいると思う。 　そして私の考えをその「誰か」に知ってもらいたく思...

第一章「氷精の願い」 　夏の始め、春に咲き乱れた桜も新緑に包まれ、肌を撫でる風も暖かさを孕む時期。瑞々しい緑に囲まれていた。 　それらは太陽から降り注ぐ光を浴び、次に穏やかな風に吹かれて、まるで...