あの日、寒空の下震える黒猫を拾った。
痩せ細り、か細い鳴き声を上げて必死に生きようとしていた。
ペット不可物件だったが、そのまま見捨てる訳にも行かず…
申し訳無いと思いながら大家に内緒で熱心に世話をしたが…
ある日大家に見付かってしまい、退去か猫を捨てるかを選べと言われた。
また野に返すのは忍びないと思ったが金の無かった俺は引っ越す金もあるはずなく…
出逢った場所に猫を放ち、泣きながら家に逃げ帰った。
帰っても涙は止まらず、去る俺の背中に向かって鳴く声が頭から離れなかった…
泣き疲れ寝てしまった翌朝、インターホンで目が覚める。
また何かの勧誘か？
腫れた目を擦りながら開けた扉の向こうには、ふくよかな…猫？
いや、女だ。猫耳を付けた。
ハロウィンはとうに過ぎたはず…
女は俺の顔を見るとにこにこしながら有無を言わさず部屋に上がりこむ。
慌てて振り向くと、女はあいつが好きだった窓辺で丸く蹲っていた。
あいつが好きだった座布団の上で、毛繕いのように髪を弄る。
その姿はまるであいつそのもので、俺は泣きながら女を抱き締めた―
―――――発情期だったなんて、聞いてないぞ。

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170枚+約5分半収録