初秋。 　先週からの冷え込みに身体が慣れてくれないのか、今日も今日とて起き抜けから気だるい。布団を頭まで引っ張り上げて昼過ぎまで寝ていたら段々と気分まで落ち込んできてこれまで自分が行った愚にも...

香奈子は目覚めてベッドから降り、腰に力が入らないことに気づいた。クリスマスイブのせいだとすぐに彼女は考えた。 　春海はスリップにパンツを穿いただけのあられもない姿のまま、窓の方へ身体を向けて横...

一、 「冬はいつもここにいる」とカラスは言った。雌なのだろう、女性のかんばせと身体を持ち、長い黒髪と冬のセーラー服を涼風になびかせる姿は確かに烏のそれであった。私は如何にも女性と言った見目...

柚子と書いてゆずこと読む名前だったが、三歳の時に丸柚餅子を食べてからそれの類にすっかり嵌ってあちらこちらでゆべしゆべし歌っては笑うものだから、いつしか両親以外の誰からもゆべしちゃんと呼ばれていた...