掌中にヌメヌメと光っている拳銃のグリップと、潰さないようカマキリを握る感触は似ている。不快な汗がとめどもなく肌を滑り落ち、ブルーシートにぽたぽたと黒い蟲に似た斑点を生む。息を吐き、吸い込んだ熱気...

動かなくなった男の肉を食い千切り、月光の下青白く照り返す肌の上を、体毛をひりりと震わせながら黒い微小が這っていった。肩骨によじ登り触角をぴくぴくと運動させ、頭部はやや斜め上、満ちぬまま架かる月へ...

鍵を落としたんです。ええ、何処に落としたのかは分かりません。ホームセンターから帰ってくる道中かもしれません。まあ関係ありませんか。はい。住所はさっき言いましたっけ？ 言いましたか。そうです、二〇...

澄んだ静寂に耳を澄ませつつ〇〇する半透明な殻に閉じ籠っている。しかし空の右手と愛し合った性器の温もりに脳は反応し、ブッと性急に目を覚まさせた。目の前の、中空に広がるよく磨かれた夜と、ジワリと広が...

彼女はいつでも左腕を取り外すことが出来た。 　二年前に僕の母は死んだ。とある病気のせいだ。奴らは食パンに生えた「かび」みたいにじわじわと広がって母さんの肉を好き放題に食い散らかして殺した。...