いつの間に寝てしまっていたのか、時間を見れば二度寝を始めてから二時間は経っているみたいだがもっと短いように感じた。マイは不格好ながらも涎を手で拭って上半身を起こした。 　朝起きた時は寝間着姿の...

行く宛もなく町のベンチに腰掛けていた僕は、雲が泳ぐ青空を眺めていた。 　本当ならこのままレーシャに会えばいい。どうしてかベンチに吸い寄せられてしまった。僕の心が弱いせいだろう。昨日の今日で、レ...

太陽が鬱陶しく思えていたその日に僕はラーヤの場所に向かった。臨時にラフレさんらの家が建設されている今、フェルプス一家はフォールズさんの家で居候生活を広げていた。 「ごめん、本読んでる時に邪魔だ...

広大に見えた海の中で、一人でいったい何をしていたんだろう。様々な形の水をみると毎回レーシャは呟く。怖くなる事なんて一切なかった。むしろ、自然に包まれているような気がして、心地よかった。 　冷た...

　マイも、マイの家族も僕もレーシャが不憫に思えてならなかった。会議が終わった後、今後のスケジュール一覧を見ると、やるせなくなる。キャリーおばさんが紙に書いてくれた表には、レーシャをいかに上手く匿...

　見知らぬ所からきた異邦人。記憶を失っている。そして、異邦人が来てから町に事件が起こり始めた。人々がレーシャの事を蔑ろにし始める要素は全て準備された。後は町内全体に波が広がるのを待つだけだ。 ...

　外はさっきよりも煙の匂いが濃くなっており、バーベキューをする時の匂いとは全然違って、おどろおどろしい。 　群衆は誰もが非日常的な空間に入り、慌ただしい。本当なら僕も、これから町の未来はどうな...

　例えば特殊部隊の訓練を受けていたら、今廊下からマイの部屋に戻ってくる時の足音が二つだけではないという事が分かったのだろうか。何も知らない僕は、落ち着いたジュエラと、彼女の肩を支えるマイだけがい...

　外に出た時にはその正体がなんなのか、僕はすぐに分かった。ただこの町にいる〇〇たちには、あの車がどんな意図を持って公道を走っているのか分からなかったみたいだ。 　黄色い、トラックくらいの大きさ...

二人分の温かい紅茶を用意して、僕は再び席へと戻った。昼間だから電気はつけていないが、空が曇りを帯びていたため室内は暗闇が多い。テーブルも少し冷たかったから、紅茶の温かさが人間の味を蘇らす存在とな...

　待ちに待ったフォールズさんからの電話の内容によると、どうやらマイは「大丈夫」だそうで、心から安心させられた。キャリーおばさんもレーシャもほっとしたようだ。詳しい事情については説明できないとされ...

　玄関ではキャリーおばさんが周囲を見渡していた。異様な光景だ。 「おばさん！」 　フォールズさんから大きく離れて、僕はおばさんの所へ走った。 「アラード君！　よかった、あなたがきてくれて。...

　朝食を食べ終えたから、皿をシンクに持っていき、洗わなければならない。いつものようにスポンジを使って、白い皿を擦るのだ。窓の近くの日差し幹、太陽の光があたる室内乾燥場に持っていけば朝はそれ以外に...

　僕が起きたのは日光が部屋の中に侵入する頃だ。朝九時前後の事である。昨日は睡眠の質があまりよくなかったせいでベッドから体を起き上がらせるのが申し分ないほどに面倒だ。 　学校に通っていたころは七...

　マイの家では本当に美味しいディナーが用意されており、空腹感を洗いざらい流し、代わりに満足感を腹の中に輸入した。エビフライ、照り焼きソースの魚の煮物、何らかの隠し味が効いたお手製ドレッシングのか...

　これから話す事はとんでもなく残酷な出来事だった。だから僕は、話す前にどうしてもレーシャに言いたい事があったのだ。 「僕はこの町が好きなんだ。どうしようもないくらいに好きだ。だからレーシャにも...

　どうして女性の風呂は長いのだろうと、常々疑問に思っていたが口に出す事はなかった。それは今日も同じだろうな。僕はマイの家のリビングの自家製椅子に座りながら内装を丁寧に描写している。曲線に一回でも...

　閉められた扉を、僕はひたすらに見つめた。 「あなたのお父さんは、おかしいわ」 「そうだね。君の言う通りだ」 　初めてこの家に来た時から、扉も、外装も変わらない。だから扉の向こう側に、父の...

　誰にも譲れない夢があった。僕は夢だけを頼りに生きて、その世界だけを信じてきた。 　高校を卒業すると大学や会社には行かず、都会から大きく離れた静かな港町で家族と暮らし始めてもう何年も経っている...

　潮風と海の饗しはどこか懐かしく、私の心を温めた。 　今、私を囲むのは水色の海だけだった。雄大な世界に置き去りにされて、本当なら寂しさのあまり泣いてしまうだろう。ところが太陽が私に微笑みを授け...